リグニンを含んだセルロースナノファイバー(CNF)を配合した塗料性能の研究
お知らせ
お取引先様 各位
いつもお世話になり、誠にありがとうございます。
弊社は、森林整備事業で派生する間伐材や未利用材の高付加価値化を目指し、この度、北海道立総合研究機構 林産試験場(以下、林産試験場)と共同で、自社林に植栽されている樹種を含めた北海道産の針葉樹・広葉樹の内、数種類をLCNF※1化し、まずはじめに塗料添加剤としての利用可能性の研究を始めました。
以下詳細になります。
・研究に至る経緯
当社は北海道道東地域に約100haの社有林を保有・管理し、森林整備事業で派生する間伐材や林地残材などの有効活用と高付加価値化を模索していました。そこで自社林がある鶴居村や標茶町は酪農が盛んな地域で、おが粉などの木粉製造も昔から行われていることからLCNF製造過程の木粉化も容易と考えました。また、地球温暖化による紫外線の影響が木造建築物の耐用年数に大きな影響を与えると想定し、その防止策としてリグニンを含んだCNF※2を添加した塗料等の需要が近い将来高まると考え今回の研究に至りました。
・研究概要
木材などの植物繊維の主成分であるセルロースをナノレベルまで解繊したCNFは再生可能性、高強度、低熱膨張率、ガスバリアなどの特徴を有することから、脱化石資源化を図る素材として大きな期待が寄せられています。
一般に、CNFを製造する際には、植物原料から蒸解等でリグニンを除去して得たパルプを原料とするが、これとは別に、木粉等を脱リグニンせず直接解繊(LCNF化)する方法もございます。この方法は脱リグニンに要する設備や薬剤、エネルギーコスト等を省略でき、より環境負荷が低いようです。また、含まれるリグニンの特徴として疎水性が高いこと、高い紫外線吸収性が期待できることから、今回、共同研究としてLCNFを採用し、塗料に添付した際の粘度変化や塗膜の耐候性を評価しました。樹種により粘度に差があったが、数%の添付で高いチキソトロピー性が現れ液だれ防止効果が期待されました。また、促進耐候性試験(約1,500時間)と屋外暴露試験により、高い耐候性は確認できなかったが、変色抑制効果が認められた。今後は、添付割合を増やすことで更なる効果を期待出来るものになります。
※1 リグノセルロースナノファイバー
※2 セルロースナノファイバー:合成樹脂と混ぜることで、鋼鉄の1/5の軽さで5倍の強度をもち、線膨張性はガラスの1/50程の性能があるとされる環境性が高いバイオマス素材
・基礎研究の発表
2024年3月13日(水)から3月15日(金)まで、京都大学で開催される「第74回 日本木材学会大会」にて今回の基礎研究部分を共同研究者である林産試験場が発表されました。
・今後の展開
CNFは脱炭素・サーキュラーエコノミー(循環型社会)に寄与する素材として注目されており、カーボンニュートラル、またはSDGsの取組への貢献が期待されている新素材である。当社はこれまで通り「植え、育て、伐り、使う」という森林整備事業を継続していくとともに、森林からの恵み(生態系サービス)を最大限活用し、幅広く用途開発を進めていきます。引き続き研究・開発を進め、商品化・実用化を目指していきます。